理事長 挨拶

 現代社会の状況は、明らかに物の時代から知識集約型の「ナレッジ」の時代へと変遷を遂げております。しかしながら、わが国の中小企業の経営スタイルは、今日に於いても、知識集約型への移行が進んでいるとは言い難く、さらに国内外でのコスト・価格・品質競争など、大変厳しい状況にあります。
今こそ、日本の中小企業の持つ豊富な資産である「知的資産(ヒトの持つ知恵と工夫、経験)」を活用した経営スタイルへの移行が急務であることは言うまでもありません。
しかし、その「知的資産(ヒトの持つ知恵と工夫、経験)」そのものを活用する経営手法である「知的資産経営」の導入は、今日に至っても、ようやく「知的資産」と言う言葉の認知が広がるにとどまっております。 
これらは、自社の持つ強み(知的資産)への気付きや、その経営の源泉となる「知的資産」の活用を社内へ提案できる人材、また、サポートの出来る人材の絶対的な不足を原因とするものであります。


私どもIAP協会は、「知的資産経営」を中小企業へ導入し、サポートする要件スキルを満たした人材となる「知的資産プランナー」の認定及び養成を目的として設立された団体であります。


以下に、「知的資産プランナー」の必要性と魅力を述べさせて頂きます。


○「知恵・工夫・経験」を可視化するスキルを持つ「知的資産プランナー」の必要性!


 人類の歴史は、「一人の天才によって創られるのではなく、多くの人の知恵・工夫・経験の組合せや、並べ替えによって発展してきている。」という考え方には、多くの人が賛同します。また、「一部の凄い天才や大企業だけで世の中が動いている訳ではない」との意見にも多くの中小企業経営者さんからの賛同を得ることが出来ます。


 しかし、面白いことに「その多くの人の知恵・工夫・経験にあなたは入っていますか?」と聞くと「私の知恵や工夫は大した事ないから・・」「うちの会社は大したことないから・・」と言う答えが返ってきます。


「多くの人」と言いつつも、自分はその中には、カウントされていない理由は何故なのか?


 その理由は、「多くの人の知恵や工夫・経験」をうまく組み合わせたり、並べ替えたりした人、つまり『プロデュースした人たち』が、世の中を動かしているから、との思いではないかと考えられます。
そう考えると、「わたしは、自分の知恵や工夫・経験をわざわざプロデュースした事なんて無いし、ましてや、AKBの秋元康さんやモー娘のつんくさんの様なプロデュースする才能も無い・・・」だから、「自分がカウントされない」となるのです。


仮に、一部の天才や発明家の人たちや大企業を「天才脳」、そして、多くの人の知恵・工夫・経験を「集団脳」として考えてみると、本来、自分を含めた多くの人の知恵・工夫・経験が「集団脳」であるべきなのですが、実際、イメージされている「集団脳」は、『プロデュース能力の優れた人』を想定している事となり、「天才脳」と「集団脳」は、結局、同じ様な人たちをイメージしてしまっている事になります。


 しかし、「集団脳」の能力、つまり、『プロデュースする・企画する・創造する』といった能力は、果たして、特別な人の持つ能力なのでしょうか?


子供のころ、目の前に積み木やブロックがあれば、子供は自然と、くっ付けたり、並べ変えたりして、恐竜や家や車といった色々なものを創ります。
これは、「ものの組合せ、並べ替えから、新しいものを創る」ことであります。
つまり、プロデュース能力は、『誰にでもある、人が生れながらに持っている才能・性質』といえるのです。


 そして、ブロックや積み木の数が多ければ多いほど、いろいろなものが創れます。
また、四角い形だけでなく、丸や三角、タイヤの形、花の形などのものがあれば、さらに、いろいろものが創れます。


つまり、プロデュース能力とは、ずば抜けた才能ではなく、どれだけ目の前に、多くの素材や材料(知恵・工夫・経験)を揃える事が出来るのか?といった能力なのです。
 これは、「ヒトの持つ知恵・工夫・経験をしっかりと聴き取る」という事さえ出来れば、誰もが、必ず発揮できる能力という事です。


そして、多くの素材や材料を目の前に揃えるには、目に見えない、見えにくい、「知恵・工夫・経験」を目に見えるものにする、文字化・データ化する作業が必要です。
その作業の結果は、間違いなく、新たな商品やサービス・仕組みを生み出すことへ繋がるのです。
即ち、社会や経済が発展し続ける為に、「絶対的に必要なプロセス」なのです。




○「知恵・工夫・経験」を権利化・保護化するスキルを持つ「知的資産プランナー」の魅力!


目に見えない、見えにくい、「知恵・工夫・経験」を目に見えるものにする、文字化・データ化する事で、プロデュースの材料・素材として活かす事が可能となります。
しかし、同時に、誰もが「見て、聞いて、真似る事が出来る」といった危険性も併せ持つ事となります。
「知恵・工夫・経験」の組合せ・組み換えにより、新たな商品やサービス・仕組みの素材や材料を揃えたとしても、他人にそのノウハウやアイデアを勝手に使われてしまっては、元も子もありません。


土地や建物、製品の様な有形物は、登記や売買、譲渡、貸与などによって、誰がその物の所有者なのか、だれが権利者なのかは、明らかなので勝手に使われる・盗られる(犯罪)と言った事は滅多に起こりません。
しかし、無形の資産である「知恵・工夫・経験」は、お店に陳列したり、倉庫や金庫に仕舞っておくことは出来ません。
また、仮に他人が考えたアイデアやノウハウを無断で真似したり、勝手に使ったとしても、無条件で不法行為(犯罪)とはならないのです。
そこで、「無形資産」に対しては、知的財産権といった特別な権利を保護する為の法律が用意されており、IAP協会が認定する「知的資産プランナー」の要件に於いても、[知的財産管理技能士3級]レベルのスキルが求められるのです。
また、「無形の資産」が持つ権利や価値の内容を知っている(知的財産管理技能士3級)からこそ、「人の持つどんな小さな知恵・工夫・経験であっても、組合せや並べ替えることで、大変価値のあるものとなり、世の中の為に役立つ商品やサービスを生み出し、未来を創る為の重要な資産となる」と言った物の見方・考え方で、人の話を聴き取る事のできる力、「敬聴力」を身につけた魅力的な人材となれるのです。


  「敬聴力」とは、ナニ?ではなく、ナゼ?を聴き取る力のことです。


「何が? いくらで? どこで? どの様な売り方で? 売れているのか。」ではなく、


「なぜその商品が生まれたのか? なぜその価格なのか? なぜそのエリアなのか?
なぜその売り方なのか?」を聴き取る力のことです。 


「ナゼ?」の中には、本当に多くの「知恵・工夫・経験」が埋もれているからです。
以上、簡単ではございましたが、【知的資産プランナー】の必要性とその魅力について述べさせて頂きました。
 最後に、我が国の中小企業の持つ「潜在的な強み」の掘り起こしと、その活用こそが、日本の未来を担う世代へ継承すべき資産である事を申し述べるとともに、私どもIAP協会は、知的資産経営を導入する中小企業の一助となるべく、一人でも多くの【知的資産プランナー】の養成・輩出に邁進することを誓い代表のご挨拶とさせて頂きます。

平成23年6月

理事長 プロフィール

所長 西元 康浩(にしもと やすひろ)

所属団体(大阪府行政書士会)における主な経歴
昭和62年 行政書士登録
平成15年~平成19年 知的財産特別委員会 副委員長
平成19年~平成21年 知的財産専門部会 座長(業務部副部長兼務)
平成21年~現在 知的財産専門部会 幹事(業務部 新規事業担当)

その他経歴

平成19年以降「知的資産経営」導入に向けての東京・大阪を始め宮崎、福岡、兵庫、滋賀等の行政書士会を中心に他士業セミナー・研修会及びシンポジュウムでの講演(経済産業省を主管とする団体主催を含む)

昭和56年 郵政省勤務
平成 4年~現在 (有)マクロシステム研究社 設立(ソフト開発・コンサルティング会社)
平成21年~現在 知的資産経営サポートセンター 設立 所長就任
平成22年7月~現在 緊急人材育成支援事業 (知的財産管理実務科) 開講
平成22年 和解あっせん人・調停人(公益社団法人 総合紛争解決センター) 就任
平成22年〜(社)OSAKAあかるクラブ 法制顧問就任
平成23年6月1日 一般社団法人 日本知的資産プランナー協会 設立